SONYのEマウントはCanon・Nikonと並んでメジャーなメーカーとなりましたが、未だにEマウントでバリバリ動体撮影をするよという人にはなかなか出会いません。
基本的にはスナップやポートレートなどをする方に好まれている感じがありますので、スポーツなどの動体撮影に関してはやや情報を探すのが辛いです。
私自身スポーツ撮影は年に数回必ずしますし、動物や子供、航空祭※12020年はできませんでしたがなどを撮るため、機材を選ぶ上で「動体撮影ができるものか」というのは重要な要素となります。
Eマウントの純正であればさほど懸念を感じる人は少ないでしょうけど、MC-11を使うとなると「おいおい、それ大丈夫か」と不安になるものです。
結論から言うと大丈夫だったのですが、どの程度の動体撮影で大丈夫なのか、どの部分に気をつけて運用すべきかという部分について書きたいと思います。
まず前提としてMC-11を使う必要がある理由を確認する
少し昔のEマウントユーザーならまだしも、最近はEマウントのネイティブレンズも増えてきましたし、MC-11を使ってSONYのカメラで撮影したいという方は徐々に減ってきているでしょう。
どのカメラでも同じですが基本的にはネイティブのレンズ(かつ純正)を使うのが最も安定したパフォーマンスを出すことができるので、MC-11を使わなくて良い環境を整えられるならそれに越したことはありません。
また、これからMC-11で動体撮影をどこまで撮れるのかという話をするのにそれを言われたら元も子もないということを言いますが、快適かつ気持ちよく動体撮影をするならCanonかNikonのレフ機を使った方が良いです。
これは現時点(2021年1月)ではまだミラーレス一眼のファインダーの見え方やAFの食いつきが一部のレフ機に追いついていないと個人的には感じているからです。
私の場合はメイン機がSIGMA sd Quattro Hなので持っているレンズがほぼSIGMAのSAマウントとなります。
そのレンズ資産を上手く利用するとなるとMC-11を使わざるを得ないという状況なので、マウントアダプター経由での動体撮影で足掻いているのです…
SONYのEマウントでスポーツなどの動体撮影は快適に撮れるのか
SONYのEマウントカメラは無印のα7、高画素のα7Rシリーズともに3世代目から急激にAFの質が上がりました。
人によって「快適」というのがどのレベルなのか差はありますが、動体撮影である程度実用的なレベルにAFがなったと言えます。
実際に私はα7Ⅱとα7RⅡからそれぞれ3世代目のボディに買い替えたわけですが、AFの快適さは体感としてかなり大きいです。
α9シリーズは別次元となるのであえて触れませんが、α7シリーズであっても3世代目以降であれば完全に実用レベルとなっています。
もう少し細かくいうならば2017年以降に販売されたSONYのカメラというのがターニングポイント。
SONYはフルサイズにしてもAPS-Cにしても基本的に新しいボディに良いAFを乗せてくるので、α7RIII・α9販売開始以降のカメラであれば動体撮影は比較的撮れるようになります。
α6500に関しては実際に私自身は使ったことないのですが、こちらもα7RIIIと同等に食いついてくれる様です。
実際にEマウント純正レンズで撮影した動体撮影
上の流鏑馬の写真で利用したカメラはα7Ⅲで、レンズはSONY FE 70-200mm F4 G OSSです。
レンズをEマウント純正のものを使ったということでAFの食いつきは比較的安定していました。
ただ、レンズの特徴としてもあるのでしょうけど、そもそも爆速AFのレンズではないので、AFの速さや追従性に感動するという感じではないです。
「普通に撮れるなー」という印象。
実際に流鏑馬の撮影をしたことがある方はわかると思うんですが、結構なスピードで駆け抜けていくので、流鏑馬を追うことができるAFがあれば色々なスポーツでも十分対応可能だとということがわかります。
MC-11を使った時の挙動について
Eマウント純正であれば純粋にボディとレンズの性能がそのまま反映されるので問題ないですが、MC-11を使う場合には挙動が変わってきます。
そして動作がSIGMA公式で保証されているかどうかというのも大事なポイントです。
MC-11の動作保証している組み合わせか確認するのは必須
MC-11はCanonのEFレンズやSIGMAのSAマウントのレンズがつけられるマウントアダプターですが、SIGMAレンズの比較的新しいモデルというのが動作が保証されているレンズです。
そのため「CanonのレンズでもAFは動く!だから問題ない」というわけではないので注意が必要です。
確かにCanonのレンズでもAFは想像以上に動きますし、スナップ程度であれば問題ないですが、動体撮影のように安定したAFで追従してくれるかということが重要なシーンで保証対象外の組み合わせで挑むのはおすすめできません。
自分が持っているカメラとレンズがMC-11の対象製品かどうかは公式サイトにて確認をしましょう。
対応レンズは一応AF-Cは非対応としているけど追従は実際にしてくれる
MC-11は対応レンズであっても基本的にAF-Cは動作の保証はしていません。
ただ実際には追従はしてくれます。追従はしてくるんですよねえ。
このAF-Cの追従ですが、挙動のイメージとしては純正の組み合わせが100点だとしたらMC-11経由のレンズは70〜90点くらいです。
この点数の誤差はレンズそのもののAF周りで挙動が変わるというものありますが、単純にボディのレベルによっても変化があるからです。※2α9シリーズは純正に近いレベルで動いてくれるという話も聞きます。実際に試していないので体感はしてませんが
SIGMAが公式として保証しないのはあくまでも純正と同じレベルで動かせないからという理由だからかなと勝手に思っています。
仮に自分がSIGMAの人間だとしたらSONYのカメラの最大パフォーマンスを保証できないのであれば動作保証とうたうのは避けようと思います。クレームになりますし。
ちなみに対応レンズだと連写のモードをH+にしても追従していますが、非対応のレンズだとLoの秒3コマならギリギリ追従はしてくれます。
この挙動自体はLA-EA3を装着した時と同じような感じですね。
LA-EA3装着時のみ。SSMレンズまたは、SAMレンズ装着時。LA-EA3使用時。動画撮影時は「像面位相差AF」に対応していません。AF-CはAFシステムで 「位相差AF」を選択時のみ使用可能ですが、「連続撮影:Lo 」モード以外(Hi+、Hi、Mid)での撮影時、ピントは1コマ目に固定されます
A F-Cで緑色のフォーカスポイントが目まぐるしく動いているのを見ると「おお!非対応レンズでも問題なく動くぞ!」と勘違いしてしまいますが、あくまでも最初の1枚目のピントを追っているだけで、その後も連写をし続けた時にAFが追従するかどうかは別の問題です。
非対応レンズだとこの1枚目以降のピントに関してはあまり期待しない方が良いです。
逆に言えば、単写で撮っていくというスタイルの方であれば、さほど問題点に気がつかないで淡々と撮影できるかもしれません。
α7Ⅲとα7RⅢをMC-11経由で動体撮影をしてみた感想など
競馬撮影【α7Ⅲ+MC-11+SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM Contemporary】
競馬の撮影となるとアングルは横からが多くなるかと思います。特にゴール前とかは。
そもそも被写体が横に移動する形であればAFの追従はしやすいため、そこまで厳しくない環境となります。
そのため、α7ⅢにMC-11をかませた状態でSIGMAの150−600mmを使っても全然問題なく追従はし続けてくれました。
ただ、 ゴール前の撮影となるとボディを結構な範囲で横に振りながら撮影することもあると思います。
AF自体は問題なくてもファインダーの見え方はやはりEVF特有のラグが若干発生するので、何回か撮影をして慣れが必要ですね。
私は動体撮影をする時は AFのエリアを基本的にゾーンに設定して、範囲内に被写体が来たら連写を開始することが多いです。
上の撮影の時もエリアの配置だけは先にしておいて、その範囲に馬が来たタイミングで連写をしています。
この写真はカーブに入り始めから一呼吸置いてAFスタートした形ですが、馬が前後するような構図でもピントを合わせてくれています。
スポーツ撮影:ラグビー【α7RⅢ+MC-11+SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM Contemporary】
こちらはトライされる直前のシーンです。
かなりの距離移動がありましたが、AFはしっかり食いついてくれていました。
正直なところ、「いやー、結構な距離走ってたし、流石にピント抜けてんだろうな」と思いながら撮影していたのですが、家で撮影データを見返してみるとほぼピントあっていたので驚きました。
レンズがそこまで明るくないレンズですし、被写体深度はF2.8やF4などの設定で撮るよりはシビアではないという状況でしたが、期待以上の動きを見せてくれたMC-11。
ちなみに実際にどんな感じでAFを追っているかをGIFにしてみました。
これは縦移動だけというよりは敵を避けながら斜めに移動をしながらボールを運んでいるシーンだったので、縦横の複合という感じです。
私はラグビーの撮影が初めてだったので動きの規則性というのがあまり読めていないところはありましたが「とりあえずファインダーに収めてAF連写だ」というシンプルな撮り方でもぼちぼち撮れてしまうのが助かります。
こっちもGIF作成しました。
ラグビー面白かったですね…
また撮影に行きたいです。
スポーツ撮影:バスケ【α7Ⅲ+MC-11+SIGMA 70-200mm F2.8 DG OS HSM Sports】
バスケの撮影は毎年必ず行っており、SONYボディでの撮影はこの写真を撮った時が初めてです。
今まではNikonのD800、D500、OLYMPUSのOM-D E-M1 Mark IIで撮影をしていましたが、AFの追従具合に関してもD500に近い感覚で撮影できていました。
個人的にバスケ撮影をする時の好きなシーンはドライブを仕掛けるタイミングのキレを感じるところなので、そういうタイミングでシャッターを押し始めることが多いです。
ペネトレイトを仕掛けてから切り返しでジャンプシュートをするシーンです。
上のGIFで途中で若干連続性に切れ目が発生しているのは、意図的に連写を途中でやめて、その後にすぐ開始をしたからです。
この連写を止めた理由などは後ほど説明をいたします。
バスケはサイドライン側の観戦しやすい位置も良いですが、撮影をするならばエンドラインでの席がおすすめ。
ゴール下のプレイで迫力出して撮るにはエンドライン側での撮影が良いです。
スポーツ撮影:レッドブルアイスクロス【α7Ⅲ+MC-11+SIGMA 70-200mm F2.8 DG OS HSM Sports】
アイスクロスというスポーツの知名度自体はそこまで高くないと思います。
私自身もたまたまこの競技を知ったので。
しかし、実際に観戦してみるとかなり迫力あります。
アイスクロスの撮影自体が初めてだったということもあり、どの程度のスピードで走ってくるのかというのもわからない形での撮影スタートでした。
とりあえず陣取った場所はジャンプをする選手が出てくるところだったので、そのシーンが多めです。
上の写真のシーンは「選手が出てきた!」と認識して撮影できるタイミングが本当に一瞬なのでピントをサッと合わせてすぐに終了です。
このあたりは本当にAFの速さに助けられました。
写真でもわかるように暗所での動体撮影ということで撮影環境としてはかなり悪いです。
これでMC-11かませてAFちゃんと動くかどうかは不安が多かったですが、まあまあ撮れ高は良かったですし満足いく結果です。
ラグビーやバスケよりも選手の動き自体がかなり早かったこともあり、AFの追従という点ではややピントが追いついて来てないシーンもややいつもより多めに感じましたが、まあこれはレフ機でも外すよなって思ったので十分すぎるくらいの動きじゃないでしょうか。
ちなみにアイスクロスがどんなスポーツかというのはRed Bullの公式You Tubeを見るとわかります。
本当にスピード感がやばいです。
AFの食いつきの初速は問題ないが追従に癖がある
MC-11とSIGMAのレンズを組み合わせた時の挙動としてはまずAFをスタートさせるタイミング、つまりAF-C(私の場合は親指AFに設定)を開始するタイミングから数コマはほぼピントを追ってくれます。
ただし、背景・撮影環境の明るさや被写体の動きの速さによっては少しAFが置いてかれることはあります。そして一回ピントを外すと復帰は結構厳しいです。
D500を使っていた身としてはAFが食いつく感覚の安定さやピントが抜けてからの復帰はD500の方が優れていると感じましたが、それには及ばない感覚です。
しかし、α7Ⅲ・α7RⅢとMC-11を組み合わせた装備であっても動体撮影をするにあたってのAF速度・追従性というのは実用的な範囲を抑えていると思います。
このAFの癖に合わせて撮影をするとなると、AF-Cで連写しっぱなしというトリガーハッピー的な撮影ではなく、所々でAF-Cを入れ直すという動きが必要になります。
つまりAFの1カウント目をこまめに増やすイメージです。
「なにそれ面倒だな」って感じたかもしれませんが、慣れると無意識的にできるようになるので人間の適応力はすごいなと感心しています。※3そもそも適応しなくても撮れるカメラがベスト
撮影をしていく時に「あ、このままだ追っていくとピント外す」というのがなんとなくわかるになってくるので、その直前で一瞬連写を止めてまたAF-Cで追従し直す感じです。
α7Ⅲとα7RⅢで動体撮影をする時の設定周りや注意している点について
ここからはMC-11の動きとは直接関係ない部分となりますが、α7Ⅲとα7RⅢでどんな設定をしてスポーツなどの動体撮影をしているかという紹介です。
それぞれの好みもあると思いますがご参考までに。
連写の設定について
AFは基本的にHi+で撮影をしています。
連写時のファインダーの見え方でいうとHiの方が良いのですが、Hi+のファインダーの見え方に慣れてしまったこともあり連写枚数が多い方での撮影が多いです。
おそらくどの動体撮影に通ずるものはあると思うのですが、被写体の動きの予測をしながら撮影するとEVFのパラパラ感があったとしてもフレーミングで壮大に外してしまうということはあまり起きません。
あまりにも速すぎる被写体はまだ体験していませんが、過去にα7Ⅲ・α7RⅢよりも機能が劣るPanasonicのGX8で入間航空祭撮影できたので多分平気です(適当ですいません。)
AFの追従設定
SONYのカメラでは「AF追従感度」というメニューで設定をすることとなりますが、私は基本5(敏感)で撮影をしています。
というのも、MC-11を使った時のAFの速度が純正よりももったり動く印象があるのでなるべく早くピントを合わせに行く5を基本とする形に落ち着きました。
5だと純正に近い動きをしますね。
ただ、これは撮る被写体によって5が最適でない場合もありますので、5がベストな設定ということではないです。
連写時のファインダーのフレームレート
動体撮影時のファインダーはα7Ⅲは「120fps」、α7RⅢは「高速」に設定しています。
α7RⅢは設定画面では明確にフレームレートの数値は出ていませんが、「高速」は120fpsです。
フリッカー低減のオンオフ
フリッカーが発生する環境なら当然オンにしますが、そうでない野外での撮影などであればオフにします。
どこまで影響が出るのかは私もちょっと調べきれていませんが、フリッカー低減をオンにすると若干連写枚数が落ちてしまったりAF周りでの動きに影響が出ることもあるようなので、必要な場面でのみオンにしています。
手振れ補正の有無
動体撮影をするにあたって被写体ブレを防ぐためにもシャッタースピードは結構上げると思います。
そのためフリッカー低減の時と同じ理由で手ブレをオフにすることが多いです。
使用するSDカードは必ずUHS-Ⅱを使用すること
スロット1がUHS-Ⅱに対応しているので基本的にはUHS-Ⅱを使いましょう。
連写をする時はAFの追従性も大事ですが、バッファもかなり大事だからです。
α7Ⅲとα7RⅢはUHS-Ⅱを使ってギリギリストレスなく撮れなくはないという感じなのでUHS-Ⅱ以外だとストレス溜まると思います。
UHS-Ⅱも可能であれば書き込み速度が高いものがおすすめ。
ちなみに私はSanDiskのエクストリームプロとPRO GRADEの一番速いモデルを利用しています。
MC-11とレンズは必ず最新バージョンにアップデートされているか確認をする
MC-11とSIGMAのレンズが最新バージョンになっているかは大事なポイントです。
ファームウェアが新しくなることで動きが改善することが多いので。
あと、ボディ側のファームウェアも大きいアップデートがあるとMC-11の動き方が化けることがあります。
設定の追い込みとSIGMAレンズの組み合わせであればほぼ問題なく撮れる
MC-11を使った状態でスポーツなどの動体撮影が撮れるのかという疑問ですが、私が色々と撮影をした結果「ほぼ問題なく撮れる」という結論に達しました。
しかし、ただでさえマウントアダプターというアクセサリーを使っている状態なので「動作が保証されているSIGMAレンズを使用する時はほぼ問題なく撮れる」という感じです。
最初に説明をしたようにCanonレンズや古いSIGMAレンズを使う場合はAFの挙動が更に悪くなるので、単写での撮影以外ではあまりおすすめできません。※4とはいえ、単写であれば十分実用レベルです。
ここまで色々と「MC-11を使っても撮れるんだよ!」と説明してきてなんですが、最初に少し触れたように動体撮影を想定されたレフ機と比べると1割~2割ほど撮りにくさは否めません。
こればかりはミラーレスカメラのブレイクスルーが起きないと超えられないでしょう。※5α9などは一般的なミラーレスと明らかに違うので置いておいて
D500で撮影をしていた時の感覚を100点だとするとα7Ⅲ・α7RⅢとMC-11での撮影は80~90点くらいの感覚。
本当に動体撮影がメインでお金が潤沢にある方ならCanonかNikonの一桁機と使い分けをするのがベストです。
しかし、誰しもがそんなにお金があるわけではないですし、私もα7Ⅲとα7RⅢで動体撮影を本格的に始めたのはレンズ資産を無駄なく使うためということだったので、MC-11というマウントアダプターを使いながらコストを抑えてほぼ合格点に近い撮影ができるのは「SIGMAさんありがとう」と言わざるを得ません。
直近で今回のような装備で航空祭の撮影をする機会に恵まれなかったため、戦闘機の撮影はできませんでしたが、他の動体撮影をした感覚から問題なく撮れると確信はしています。
もし撮れないのであれば私の腕が悪かったということですので。