高倍率ズームといえば「安い・便利・でも画質が悪い」というイメージが強かったですが、最近は高倍率ズームであってもかなりクオリティが上がりつつあります。
TAMRON(タムロン)というと、まさに高倍率ズームがお家芸ですので、「昔はよくTAMRONのズームレンズ使っていたな」という方も多いのではないでしょうか。
かくいう私も一眼で撮影をし始めた時に購入したのがTAMRONの高倍率ズームでした。
カメラ始めたての頃って「ズームがすごい=良いレンズ」と思いがちですもんね。
その後しばらくは高倍率ズームは使っていなかったのですが、久々に面白そうなレンズが出てきたので購入いたしました。
実は発売してすぐ購入していたので1年越しくらいのレビューです。書くの遅すぎですね。
今回はタイトルの通り、TAMRONの28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXDについてお話ししていきます。
購入した理由について
まず、購入をした理由ですが、単純に「楽な環境を作りたかったから」というものです。
高倍率ズームはカバーできる焦点距離が広いこともあり、一本で色々な画角の撮影ができることが魅力の一つです。
ただ、しばらく高倍率ズームから離れていた理由としては、最初に少し記載をしたように「高倍率ズーム=画質が悪い」というイメージが根強くついてしまっていたからです。
でも、旅行とか行く時にやっぱり荷物減らせたら楽だなとか、多少写りを妥協しても焦点距離広い方が結果的に撮れ高良いんじゃない?と気持ちの変化が出ていた時にTAMRONさんから新しいレンズの発表が。
まずF2.8スタートで1番暗くてもF5.6ということに衝撃を受けました。
今までの高倍率ズームではスタートのF値はもっと暗いですし、望遠側になると大体F6.3くらいが多かったので。
このスペック内容だけでも明らかに今までのレンズと違うわけです。
しかも、サイズ感は高倍率ズームとしては一般的なサイズですから取り回しもしやすい。
TAMRONのEマウント用レンズは軽くて好評ですし、1本くらい試してみたいなという気持ちも大きかったです。
外観と機動性について
デザインは最近のTAMRONレンズ全般と同じタイプです。
全体的に丸みのある形でスマートなフォルムです。
また、このレンズはフィルター経が67mmと他のEマウントレンズと同じサイズで作られています。
このフィルター経の統一はレンズフィルターなどのアクセサリーを流用しやすいメリットもありますが、高倍率ズームのような比較的レンズが大きくなりがちなタイプのレンズでも比較的細くなるのでコンパクトさの面でも貢献しています。
ここで、SIGMAの標準ズームと比較もしてみます。
レンズの長さについてはややTAMRONの方が長いですが、それよりも細さが全然違いますね。
レンズが細くなるとバッグにも入れやすくなるのでGoodです。
ズームリングとピントリングのサイズ感も個人的にはちょうど良いかなと思いますが、ピントリングについては人によって若干細いと感じるかも。
ロック機構について
また、このレンズはズームのロックがついています。
テレ側に回していくと結構にゅーんと伸びていくので、レンズが下を向いていると自重で落ちてきてしまうのを防げます。
ただ、実際のところズームリングもしっかり重さを感じる硬さですし、ロックをオフの状態でも自重で落ちてこないので精神衛生上の対策かも。
使い込んで段々とズームリングが緩くなって来たとしたらロック機能の有無はありがたくなるでしょう。
ボディと組み合わせた時のシステムについて
重さは575gと焦点距離やレンズの明るさを考えるとかなりコンパクトに収まっている印象です。
おかげでかなり軽快にレンズを振り回せることができるので、α7シリーズと組みわせると1kgちょっとでシステムが完成します。
高倍率ズームを利用する理由には利便性や機動力がほしいということが多いと思うので、この重さは非常にありがたいですね。
TAMRON 28-200mmの良かった点
まずは使ってみて良かったと感じた点についていくつか紹介します。
解像はしっかりする
まず高倍率ズームといえば「便利だけど写りは良くない」というイメージが強かったのですが、Eマウント専用の28-200mmはしっかり解像力はあります。
レンズ発売時は既にα7RⅣが発売されていたので、当然6,000万画素オーバーでも解像をするような設計でリリースを考えていたでしょう。
私はα7RⅣは持っていないですが、α7RⅢで使ってもレンズがボディに負けている感覚はありません。
しっかりと細かいところまで描写をしていると感じます。
このレンズが発売する時には既にα7RⅣは発売していたため、6,000万画素以上の利用でも耐えられる設計にしていたとしてもおかしくありません。
撮影した写真などは後ほど。
28mm F2.8は思っていたより恩恵を受ける
このレンズはF値が固定ではないので焦点距離によってF値が変動します。
F値の変動具合には下記の通りです。
28mm | F2.8 |
35mm | F3.2 |
50mm | F3.5 |
70mm | F4.0 |
85mm | F4.5 |
100mm | F4.5 |
135mm | F5.0 |
150mm | F5.6 |
200mm | F5.6 |
85mmと150mmに関しては焦点距離がレンズに書いてなかったのでざっくりと合わせた形ですが上記のF値でほぼ間違いないと思います。
この表だけ見ると「結構すぐ暗くなるんだな」とネガティブに感じてしまうかもしれませんが、通常の高倍率ズームであればそもそもF3.5とかF4.0からスタートをすることが多いので、F2.8の明るさが使えることだけでも唯一無二となります。
確かにF2.8で撮れる焦点距離は限られていますが、70mmまではF4.0で撮れることを考えると中望遠域でボケ感を活かした撮影をするのに十分な明るさをキープできていると思います。
そして、このレンズの特徴でもある28mmでF2.8の明るさがあることが思ったより恩恵を受けます。
例えば、旅行先の一本として持っていって、観光で訪れたところが光量の少ない場所だったなど。これは私もよくあります。
建造物系が好きなので、旅行の時はよく○○跡地や旧○○邸という施設に行くことが多いのですが、中は結構暗いことがほとんどです。
そのためだけに明るいレンズを持っていくのも面倒ですし、別のカメラに切り替えるのも面倒と思っていても、このレンズであれば28mmの焦点距離でF2.8で撮れるので非常に助かる。
最近のデジカメは高感度耐性が良くなっていると言ってもできるだけISOを上げないで済むならそれに越したことはないですしね。
あと、一部では星景写真にも使いたいという方がいるようです。
私自身は星景写真を撮らないのでその用途に使ったことはないですが、確かにF2.8あれば旅行先に一本だけ持っていって旅行先の記録と夜に星景写真も撮れますしね。
接写撮影にも強い
TAMRONの最近のレンズは寄れることを意識して開発をしている傾向がありますが、このレンズも最短撮影倍率は28mmで最大撮影倍率は1:3.8(0.32倍)、200mmでは1:3.8(0.26倍)となるので、「あ、いまちょっと寄って撮影したい」と不意に思ったときでも「あ~、近すぎてピント合わねー」ってことが起こりにくいです。
撮影をする時に毎回接写をする訳ではないですが、いざという時に寄ることができるというのは高倍率ズームとしての利便性がさらに高まるため、実際に使ってみるとかなり助かります。
旅行先で食事をした時に料理に少し近づいて撮りたいという時には楽ですね。
レンズによっては最短撮影距離が長くて、テーブルフォトを撮ろうとする時は少し体をのけぞらないといけないこともあります。
高倍率ズームは暗いレンズが多いので背景をぼかしにくい傾向がありますが、TAMRONの28−200mmはそれらのレンズよりもF値の自由度はあるのでボケ感を出しやすいレンズと言えるでしょう。
価格が安い
このレンズ安いです。これ大事。
新品で約75,000〜76,000円台を上下しているのですが、このレンズの使いやすさを考えるとかなりお得です。
最初のズームレンズとしては24-105mm F4などの王道標準ズームレンズが選ばれがちですが、これからEマウントボディを導入する方はTAMRONの28-200mmと自分の欲しい単焦点を数本買うことで、すぐにある程度の撮影ができるシステムが完成します。
カメラのボディやレンズは段々と値上がっている感じもあるので、純正レンズを使うことにこだわりがないのであれば、このレンズは十分満足できるコストパフォーマンスを持っていると思います。
TAMRON 28-200mmで気になった点
基本的な描写性のは良く、利便性も高いことからあたかも欠点がないように見えますが、多少気になったところもあったので紹介します。
年輪ボケは目立つ時がある
高倍率ズームにボケの綺麗さを求めるのは酷だと思いますが、少し年輪ボケが目立つシーンもあります。
ただ、これも背景をボカした時に毎回気になるわけでもないので、そこまで神経質になることもないかと思います。
そもそも、「ボケ感がきれいな撮影をしたい」と思ったら単焦点レンズ持っていきますし。
AFには若干不安を感じる
合う時の合焦スピードは比較的早いのですがAF-Cの挙動に不安を感じました。(このあたりはボディとの相性にもよるのかもしれませんが)
具体的には被写体を見失ったコントラストAFみたいになります。普通に位相差AFの範囲内なのに。
どうやらAFの範囲によって上手く捉えるものと捉えられないものがありそうです。
試してみた感じだとAFエリアを小さくするとどうも上手く動かないケースが増えます。
AF-Cで撮影をする場合はゾーンやオールエリアで行い、エリアを小さくして撮る場合はAF-Sで撮るのがおすすめです。
このレンズは旅行だけではなく、子供の運動会でも使いたいなと思う人がいるかもしれませんが、場面によっては撮り逃しをしてしまうシーンが出てくるでしょう。
このあたりの挙動とかはレンズのファームウェアが変われば改善する可能性もありますので、そこには期待したいですね。
レンズ補正ONが前提となる
これは仕方のないことだと思いますが、レンズ補正がオフの状態だと結構歪みが目立ちます。
上記の写真は焦点距離58mm F8で撮影しています。
広角側ではなくてもこのように結構歪みが発生しているのでレンズ補正はオン前提での撮影となります。
まあ、光学設計も求めていくとレンズはもっと大きくて重くなっていたと思うので、利便性に割り振ってレンズ補正あり運用をするのはありでしょう。
TAMRON 28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXDが真価を発揮するシーン
28-200mmの実力が発揮されるシーン別にちょっと紹介。
旅行
まず筆頭に上がるのが旅行ですね。高倍率ズームですし。
実際に私もこのレンズ1本だけで旅行に行きましたが、かなり楽でしたし撮れ高が良かったです。
まず、焦点距離の関係で「いまの装備だと撮れないな」って思うことがほぼないです。
強いて言うなら超広角域ですかね。
でもそれも本当に特定の場面だけですし、旅行で迷ったらこの1本で十分。
焦点距離も画質も妥協したくないぜ!という旅行に最適。
ポートレート
実際に私がポートレート撮影でこのレンズを使ったわけではないですが、家族写真とかを撮っている時に十分ポートレートでも使えそうだなとは感じました。
広角側ならF2.8で撮れますし、70mmまではF4.0で撮れるため、背景をぼかそうと思えばしっかりボケ感を出すこともできます。
写り方も解像度全振りでパキパキに写るというよりは少し柔らかい写りをするため、人肌にも向いている印象です。
私の撮った人物系の写真は家族写真となるので表に出せないため、ポートレート撮影の作例が掲載しているページをいくつか紹介いたします。
日常のスナップ
個人的には旅行などで便利だったというメリットよりも日常のスナップで使った時のメリットの方が大きく感じました。
スナップ撮影だとそこまで大きすぎるレンズは振り回せませんし、単焦点か標準ズームがほとんどです。
そのため望遠域での画角で撮ることがあまりなかったので、105~200mmの間で撮るスナップが非常に新鮮でした。
何回も撮影をした街でも望遠域までしっかり撮れるようになったのは個人的にかなり良かった点です。
TAMRON 28-200mm F2.8-5.6 Di RXDの作例
旅行先や普段のスナップなどで撮影したものをいくつか載せたいと思います。
ボディはα7Ⅲとα7RⅢです。
α7Ⅲ + TAMRON 28-200mm
α7RⅢ+ TAMRON 28-200mm
総評:Eマウントユーザーなら「とりあえず買おう」というレンズ
便利ズーム自体があまり好きじゃないという人はいますが、このレンズはそのような人でも「あれ?意外といいじゃないか」と思わせる出来になっています。
私自身最初に述べたように高倍率ズームについては少し抵抗がある人間だったのに、TAMRONの28-200は手のひらを返したようにおすすめレンズとしてプッシュしています。
利便性・画質ともに良い水準で作られているので、最初に買うレンズとしてもおすすめです。
また、私のようにしばらく高倍率ズームは疎遠していた人でも満足感は得られるので全方向で良いレンズ。
Eマウントユーザーなら「とりあえず買おう」
余談:TAMRON 28-200とNikonのZ 24-200は高倍率ズームの考え方を変えたレンズ
最近の熱い高倍率ズームといえばTAMRONの28-200mm以外でもNikonの24-200mmがあります。
Nikonの24-200mmはスタンダードな焦点距離と明るさですが、写りに関しては作例を見る限り全メーカーの中の高倍率ズームの中でもNikonのZ 24-200mmが一番よく写るレンズだと思います。
利便性のTAMRON、写り全振りのNikonということで高倍率ズーム群も新しいステージに入ったのでしょうか。
こうなるとSIGMAが高倍率ズームを出してくるのか気になるところですが、Iシリーズなどどの嗜好性が高いレンズ群の充実に今は力を入れているようなので、利便性重視などのレンズは少し後回しになりそうですね。