最近アメリカでピエロ騒動というのものが起きているようです。
ピエロを廃絶する運動やピエロ狩りなどが提唱されたりと、なんだか穏やかではない状況ですが「ピエロが怖い」というのはなんとなくわかります。
今回は個人的に感じるピエロの怖さと現在アメリカで多発してるピエロ事件について考察します。
そもそもピエロとは
ピエロの歴史
ピエロとは日本語で「道化師」
要するに他人を楽しませる人のことですね。
日本では派手な格好とメイクをしている人のことを総称して「ピエロ」と呼ぶことが多いですが、厳密にいうとクラウン(clown)の中にある一部の役というのが正しいようです。
道化師という役割の歴史は古く、一説には古代エジプトまで遡ると言われてます。
そこから時が経ち、中世ヨーロッパになると宮廷や貴族のお抱えとして道化師が雇われることが多くなります。
彼らのことは宮廷道化師(宮廷愚者)というようです。
英語ではJester
宮廷での催しや貴族の家で行われるパーティーなどで宮廷道化師は活躍したそうで、主にパロディーや物真似、即興で芸をやったりして場を楽しませる存在として貴重がられていたとのこと。
現在のクラウンに近い存在となってきました。
この辺りがピエロのルーツなんですね。
クラウンとピエロの違い
日本ではクラウンという呼び方よりピエロという名前の方が馴染みがあります。
しかし、前項に書いたようにクラウンとピエロのは似て非なる存在のようです。
クラウンは元々サーカスなどで曲芸と曲芸の間の繋ぎの役目として作られた存在であり、おどけたような演技で客を楽しませるというのがメインの芸です。
あえてミスをするような演技もしたりするらしいですが、どっちかというと大道芸のような芸もしつつ司会などもできたりなど、オールラウンドに活躍する能力が求められるので、見た目とは裏腹にクラウンはサーカスの中でも非常に地位の高い立場にいることが多いようです。
対してピエロは広義ではクラウンの仲間ですが、基本的に笑われる・馬鹿にされるという芸風を行います。
笑わすと笑われるは別物ですね。
ちなみにクラウンとピエロはメイクも違うそうです。
派手な衣装というのは同じですが、ピエロには涙のマークがメイクされるとのこと。
馬鹿にされて笑われることに悲しみを持つという意味があるようですが、ちょっと悲しすぎやしませんかね…
なぜピエロは怖いのか
海外ではハロウィンや大道芸でピエロメイクをしている人を見かけるようなので、日本みたいに馴染みがないわけではありませんが、みんながみんな好きというわけではないらしい。
「道化恐怖症(Coulrophobia)」という病的な心理があるようで、これはピエロなどのおどけたキャラクターに対して恐怖感を覚える心理を指します。
これは私もちょっとわかります。
道化恐怖症というとちょっと大袈裟ですが、なんとなくピエロが怖いというのは理解できます。
以下、私がなぜピエロが怖いのか自己分析した結果です。
ピエロに対する悪いイメージ
悪いピエロの筆頭に挙げられるのがスティーブン・キングのIT
私が最初に見たのは小学校くらいだと思うんですが、何せ映画の中に出てくるピエロことペニーワイズの印象が強く残ってます。
あとは実在の人物でジョン・ゲイシーとかいますよね。
彼はシリアルキラーとして非常に有名で、熱狂的なファンもいるくらい。
日本では日常的にピエロを見る機会がないにも関わらず、映画や小説などで悪役として描かれることが多いため、「ピエロって怖え…」と潜在意識の中に刷り込まれているのかもしれません。
あと最近B級映画で「道化死てるぜ!」という作品を観ました。
ギャグでした。
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得体の知れない笑顔への恐怖感
ピエロの非日常的な存在が恐怖を掻き立てているということは一因としてありますが、私にとってはそれよりも機械的な張り付いた笑顔がどことなく怖いと感じます。
ピエロっていつも満面の笑みしてますよね。
それがなんとなく怖い。
マックのドナルドも怖いです。正直。
何を考えているかわからないという恐怖感を笑顔が更に引き立てるという結果になり、ピエロというキャラクターが構成する人々を楽しませるための要素全てが逆方向に作用してしまうというパラドックスが生じてしまうわけです。
想像してみてください。
目の前に怒ってこちらを見ている人と、満面の笑みを浮かべてこちらを見ている人どっちが気持ち悪いですか?
後者の方がなんとなく本能的に恐怖を感じますよね。
何故笑っているのかという因果関係が分かれば幾分マシなんでしょうけど、理由もなくニコニコしてる人は気味が悪いです。
伊藤潤二先生の漫画にめっちゃ出てきそう。
現在のアメリカで起こっている現象について
おそらく最初は一人が悪ふざけで行ったことだと思うんですが、今ではSNSを中心にピエロの目撃例が急激に増えてます。
ここまで大げさな事になった背景にはSNSで注目されたい承認欲求と不安を煽られた集団心理が引き起こしていると思われます。
かつて日本でも1990年代あたりにオカルトブームがかなり熱を帯びてまして、口裂け女や人面犬を始めとした妖怪(?)の目撃例が多数報告され、集団下校や見回りを強化するなど社会現象を起こしたことがあります。
今思えばちょっと異常な雰囲気でしたが、その当時は本気で大人も子供も怯えてましたし、今アメリカで起こっている現象と似ている部分は多くあると思います。
ただ、1990年代の日本で起きた時と決定的に違う点がSNSの存在です。
当時の日本では都市伝説として目撃例が挙がることはあっても、実際にマスコミがその姿を捉えたわけではないですし、あくまでも伝聞と想像の域を出なかったわけです。
しかし、現在はSNSというツールがある結果、「伝聞」ではなく「目撃」になるわけで、よりリアルな恐怖感というのが湧き上がってきます。
そうなると都市伝説から事件に変わってしまいます。
SNSには馬鹿な事したりして色んな人に見てもらいたいという欲求が抑えられない人がいます。
その流れに乗ってやれみたいな軽い気持ちでピエロの格好をすることで、大勢の人がまた悲鳴をあげる…そしてその映像を見た人が悲鳴を上げる…というように、恐怖心を煽られた集団心理がスパイラル状態になっており、事態の収束がもはや自然に風化するのを待つのでは抑えきれない状態になっていくわけです。
子供が連れ去られたとか人が殺されたというのは噂話が誇張されたものでしょうし、警察まで動き始めたため、おそらくこのまま事態は収まっていくと思いますが、ジョン・ゲイシーの如くピエロ姿の殺人犯が本当に現れた日には、クラウン・ピエロとして真っ当に芸を磨いて、人々を楽しませている人が不当な迫害を受けそうです。
ピエロのいたずらよりも、周りの影響に煽られて正常な判断ができなくなった集団心理が一番怖いかもしれません。